4月、5月の休講を経て、ついにBUDO-STATIONシステマが再開。
2階道場に場所を移し、窓を開放した環境で、呼吸から開始。
視覚、聴覚などの感覚を全方位に向け、周囲の状況を感じ取る。
窓が開いていると、いろんなものが見えるなあ、と思いながら行っていると、鳥の声が聞こえてきた。
視野には入っていない。
通常の生活では、耳に入ってくることのない音だったのであろう。
この瞬間、「燃えよ!カンフー」を思い出した。
主人公のケインがポー先生と初めて会ったとき、目をつむって聞こえてくる音を答えた後、ポー先生に
「お前の足元にいるコオロギの声は聞こえるか?」
と言われ、驚いたケインが
「先生には、どうしてそれが聞こえるのですか?」
と尋ねると、ポー先生は
「お前には、どうしてそれが聞こえぬのかな?」
と逆に聞き返す。
この映画の中で、最も好きな場面だ。
私もケインと同様、実際に音を発していないコオロギの声が聞こえるポー先生に驚きと尊敬をおぼえたものだ。
見えていない鳥の声が聞こえる、というだけなら、特に珍しいことではない。
しかし、すべての感覚を全方位に及ぼすことによって、空間の把握能力が向上することを、やっと実感できるようになったのは事実だ。
ポー先生には、まだまだ及ばないが、ポー先生の能力が理解できる域には近づけたのではないか。
「燃えよ!カンフー」を初めて見たときの感動を甦らせながら、今、自分が新しい段階へと踏み込めていることに大きく感動したまま、練習は続く。。
呼吸の後は、手首、肘、肩、頭などの部位のみを動かす練習を行う。
それぞれが、ムエタイで使う部位そのものだ。
通常なら、複数の部位を同時に動かすため、単独の分けて動かす時間の余裕がない。
しかし、こうして一つひとつの部位に時間をかけて意識しながら動かす練習ができ、貴重な内容となった。
続いて歩行の練習。
膝先導で動く。
これは、腕の動きを使わないヤーンカウだ。
部位ごとの練習と同じく、格闘技に直結する練習だった。
後半は、相手の初動を察した瞬間、歩いて動く。
何かをしようと思わない、相手の初動をとらえる、といった戦いの要点が、この練習によって修得できる。
実に楽しく取り組むことができた。