誕生祝いのお言葉をくださった方々に、この場をかりて改めてお礼を申し上げます。
誕生日なんて、単なる数字の節目、くらいにしか見なさない、ひねくれた考えをずっともっていましたが、数年前から少しずつ変化してきました。
それは、十年、二十年という長い尺度で物事を見なくなったことが原因でしょう。
経営が一向に好転せず「その日のやりくりや、その日を過ごすこと」に精一杯という状況が続いて、次第に「その日が過ごせればいい」という発想になっていき、一ヶ月先はおろか、一週間先のことも考えにくくなりました。
スマトラ沖地震でプーケットが流され「この世に楽園はなくなった」と、愛するタイでさえ夢の地ではなくなって将来を断たれ、東北の震災で「明日の安全という保証はない」と思い知らされたことも、長期的な視野の崩壊に拍車をかけたと思います。
しかし、一日一日が勝負という意識で生き、大晦日や元旦、誕生日といった数字的な節目で一日一日の積み重ねを振り返ってみると、よく生きてこられたな、と感動をおぼえることがわかりました。
自分に対して「よくやった! よくやったぞ!」と映画「七人の侍」で野武士との初戦に勝利した百姓たちに加東大介がかける労いの声をそのまま贈りたくなります。
明日をも知れぬ身でありながらも、その日その日を生き続け、日々の積み重ねが一年になった。
それを祝ってもいいのではないか、と思えます。
そして、一年を生きることができたことを、縁のあったすべての皆さんに、自分を取り巻くあらゆる森羅万象に感謝します。
皆さんへの感謝、自分への祝福。
大晦日や誕生日などの数字的な節目とは、感謝と祝福をするひととき、ととらえることができるようになりました。
しかし、目前の危険と内なる恐怖が終わることは永遠にありません。
それらに対して、一日一日より、さらに短い単位の刻一刻で打ち勝っていくために、束の間の感謝と祝福を心に刻み、新たなる戦いへと態勢を整えねばなりません。